有害なる独身貴族
「ごめんな、房野。まあでもせっかく皆集まってくれたから、中央においで」
中に入って驚いた。
客席には、刈谷さん、紫藤さん、北浜さんのモニターメンバーに加え、茜さんたち常連客、それに上田くんやパートの皆さんまで揃っていた。
「みなさん、どうして」
「茜さんが食べに来て、二人が揃って居ないから心配しちゃってさ。説明しているうちに、店長の実家に挨拶に行ったとこまで話をしちゃったんですよ。そしたら、お祝いしなきゃってなって盛り上がっちゃって。早めに閉めて、有志が集まって今に至るって感じです」
数家さんの説明に、皆がウンウンと頷く。
華やかな格好をした茜さんがひょこっと顔を出した。
「つぐみちゃん、おめでとう。やったわね」
ニッコリ微笑まれて、胸が熱くなって茜さんの手を握った。
「茜さんのお陰です。私、茜さんがいなかったら、自分の気持を認める勇気も持てなかった」
「そんなことないわよ。橙次を変えたのは、あなただわ」
ギュッと抱き締められる。
そうしたら周りの女性陣が私におめでとうの雨を降らせ、橙次さんは男性陣にこづかれまくっている。
「くいもんは食ってきたんでしょうから、一杯やりましょうか」
厨房から日本酒の瓶を持ってくるのは馬場さん。
「甘いお酒がいい人は言ってね」というのはパートの水上さん。
そこからなだれ込むよう宴会になっていく。