有害なる独身貴族


「……でもまあ若いですよねー」

「二十二歳だっけ? 大卒?」

「いいえ、高卒って聞いてます」


店長が気に入るには歳の差がありすぎるのだ。

現在店長三十九歳、その差十七歳は犯罪レベルだと思う。
房野が好みだというのなら、店長はロリコンだってことだろう。

しかも店長の今の彼女らしき人は茜さんというグラマーな美人だ。
シングルマザーの彼女との結婚は考えていなさそうだけれど、たまに二人で出歩いているのをみると、相性は悪く無いだろう。
つまり、彼はロリコンでは無いだろうと思うのだけれども。


「あー、最近弱くなったなぁ」


真っ赤な顔を抑えながら仲道さんが呟く。たかが三十分早く来ただけの割に、もう潰れそうな勢いだ。
この店のお酒は日本酒しか無いので、アルコール度数が強いのは間違いないのだが。


「年とったからっしょ」


ポソリと馬場さんが呟くと、「なんだとぉ」と仲道さんが目を剥く。


「まだ三十八だぞ、俺は」

「もうでしょ」


サラリと返す馬場さんは三十歳。
いつもはもうちょっと穏やかなのだが、口が悪いのは酔っている証拠だろう。


「くっそ。俺はもう帰るわ。子供らの寝顔も見たいし」


悔しそうに唇を尖らせた仲道さんは、そのまま立ち上がる。


「一人で平気ですか?」

「だーいじょーぶ。多分」


歩き出した仲道さんに「会計明日でいいよ」と高間さんが言う。ちなみにこちらは三十五歳だ。

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