有害なる独身貴族
3.デートだなんて、冗談でしょ?
【U TA GE】の定休日は火曜日だ。
昨日からよく眠れず、朦朧と夜を過ごしてしまった私は、薄目を開けてぼんやりとカレンダーを眺める。
間違いないよな、火曜。今日だよね。
あの誘いはデートと解釈していいのか……って、いいわけないじゃん。
いかにも冗談っぽかったし、だいたい私と店長の歳の差は十七歳もある。
下手したら私は彼の子供でもおかしくない歳だ。
だからといってあまりにも子供っぽい格好はしたくない。
手持ちの服の中で大人っぽいものって言ったら、就活の時のスーツだ。……って、それはそれでちがーう!
「……馬鹿じゃないの、私」
散々悩んで、出かける時間が近づくと今度は諦めが襲ってきた。
どうせ、どんな格好したって店長が気にするわけ無いじゃん。
私ってばなーにを緊張しているんだか。
いつもの格好でいいや。
髪は数年前からショートヘアにしている。毛先をいじってみたところで、大人っぽくはならないな。
結局、持っている中では比較的おしゃれに見える藤色の七分袖カットソーにパンツといういつもとあまり代わり映えしない格好になった。
まあジャケット持っていけば、それなりに大人っぽくは見えるだろう。
五月の日差しは真夏のそれと同等だというし、暑いのにジャケット持ってる言い訳にはなるだろう。