有害なる独身貴族
「……友人の子供は女の子なんだと。先月生まれたばっかりなんだ。俺、さっぱりわかんねぇし。つぐみ、好きなの選んでよ。予算一万で」
「片倉さんの友達でしょう。一緒に選びましょう」
「何が喜ぶとかわかんねぇんからさ」
「贈ろうって思ってくれる気持ちで喜ぶんですよ。片倉さんが選ばなかったらダメです。ほらこれは? 可愛くないですか?」
広げたのは、薄いピンクのロンパースだ。
「ピンクかぁ? 俺、女の子は緑のイメージ」
「は? 片倉さん色覚おかしい。女の子って明るい色でしょう。ピンクとかオレンジとか。百歩譲っても黄色辺りですよ」
「そうかな。新緑の色とかいいけどな。ほらな、やっぱダメだろ。つぐみが選んでよ」
「そうですねぇ。確かに」
女の子に、しかも新生児に緑の服を送るセンスはちょっとあり得ないな。
そもそも、そんな色のベビー服あんまり無いし。
「分かりました。いいです、お友達の年齢とか教えてもらえます?」
着るのは赤ちゃんでも、好き嫌いは親が判断するだろう。ある程度親の趣味に沿わないと。
聞き出したところによると、お友達は大学時代の後輩らしい。
旦那様が三十八歳、奥様が三十六歳。初めてのお子さんだそう。
「今って出産年齢高いんですね」
「三十超えてから産むの、今は当たり前じゃね? 俺の知り合い、今結構出産ラッシュだぜ?」
「そうなんですか。私、おばあちゃんに二十代のうちに産めってうるさく言われたものだけど」
「つぐみの話にばーちゃんよく出てくるけど、一緒に住んでたのか?」