有害なる独身貴族


「お待たせいたしました」


渡された紙袋の中には、綺麗にラッピングされた箱がある。リボンもカワイイ。


「ありがとうございました」


私はお礼を言ってそこから退散した。
なんだか、凄く気恥ずかしくて。


さて、次は店長を探さないと。
人を引っ張ってきておいていなくなるとかあの人はホントにダメだなぁ。

ふらふらと子供服売り場を見渡しても、店長はいない。

電話したほうが早いか、と思いつつ見逃しがないかフロア案内図のところに向かうと、下の階のエスカレーターから店長が上がってきた。


「あ、片倉さん。終わりましたよ。何処行ってたんですか」

「おお。悪かったな。じゃあ次は下の階見に行こう」

「下?」


そう言われて、連れて来られたのは二階下の婦人服のフロア。
普段、見ることしか無いブランドショップが並んでいる。


「好きなの選んでいいぞ」

「え? 私……ですか。なんで」

「礼だよ。休みの日に付きあわせてるわけだし」

「はあ、でも。服なんて」


男の人に服を買ってもらうなんて、なんだか凄く恥ずかしいことのような気がする。


「こんなのはどうだ?」


襟が付いている薄緑のシャツワンピだ。
片倉さん、ホントに緑好きなんだなぁ。


「でも、着ていくところも無いし。仕事は制服ですし」


スカートなんてしばらく履いていない。

ショートヘアだし、お子様体型だし、きっと似合わない。
それに動きづらいし。……そりゃカワイイとは思うけど。

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