有害なる独身貴族


パンパンに膨れたお腹をさすりながら、私ははあっと息をつく。
ちなみにお昼は店長のおごり。ごちそうさまです。


「あーお腹一杯です」

「結構ボリュームあったな。これであの値段なら安い」

「でも、小食な人には多すぎかも知れないですね」

「つぐみには多かったか?」

「そうですね。でもオムライスだけじゃなくてセットだったので、飽きずに食べれました。ランチセットとかは品数多いと嬉しいです」

「でも品数増やすと値段を上げざるを得ないんだよなー」

「それもそうか」


こうして話していると、店長はやっぱり店長だ。
何にも考えていないようだけど、お店のメニューとか、経営については常に意識しているんだなぁ。


話しながら、結局私達が向かったのは、片倉さん御用達だというスーパーマーケット。

わざわざ電車にのって、青果市場の近くにまで連れてこられる。いわゆる安値をウリとした赤札一杯のところと違って、落ち着いた印象のお店だ。

お値段も高くて、まじまじと見ていたら、片倉さんが小声で教えてくれる。


「ここは無農薬野菜しか取り扱わないんだ。だから高い」

「なるほど」

「でも試食用の食材探しには最適なんだよな」


片倉さんの持っているカゴには、どんどん野菜が追加されていく。


「ナスとズッキーニとトマトは今の契約農家で頼めそうだな。後はパプリカと……」

「あら、いらっしゃい。片倉さん」

「こんちは。元気?」


お店のおばさんとは顔見知りなのか、世間話が始まった。

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