有害なる独身貴族
5.余計なお世話もいりません
朝起きて、微妙に体がダルい。
熱を測れば36.9℃。平熱より少しだけ高い程度か。
予定表を見ると今日は昼番だ。
昼は開けている席もメニューも少ない分人手も少ないし、特に今日は私と片倉さんだけだから、接客は私任せになるはずだ。
絶対休めない。気合で行こう。
通勤途中のコンビニで、栄養ドリンクを購入。
ごくごくっと飲んで表のゴミ箱に瓶も捨てていく。
なんとなくだけど、お腹にパワーが溜まった気がする。
頑張れ、私。
「おはようございます」
「おう、つぐみ、おはよう」
店には既に片倉さんがいた。厨房は、鰹だしの香りが漂っている。
「今日のメニューは?」
「大根と豚肉の蒸し鍋」
「美味しそう」
「昼の部終わったら賄いで出してやるよ」
「はい!」
やったぁ。
ウキウキしながら厨房をすり抜けて行くと小さな片倉さんの笑い声。
「つぐみはホント食うの好きだな」
そりゃあねぇ。
特に私生活に色気のない私にとって、食べることは大事な娯楽だもん。
「あ、そうだ。、片……店長、昨日ありがとうございました。……その、服」
「ああ。こっちこそサンキュな」
「あの、高かったでしょう?」
覗き込むように言うとぷっと吹き出された。
「店長! 汚いし」
「わりい、わりい。お前ねー。俺一応オーナーよ。金の心配とかしねぇだろう普通」
「そうですけど、でも」
「まあそうまで気にするなら、今度着てみせろや。金かけた甲斐が無いとつまんねーからな」
「見せてって……」
それはまた一緒に出かけようということ?
顔が火照ってくるのが分かって、自分でぎょっとする。
自覚した途端に私の反応がおかしい。体がいうことを聞いてくれない。