有害なる独身貴族

「……見に来てよかったよ。ホント危なっかしいな。泥棒とか入ってねぇだろうな」


片倉さんの生の声と電話からの声が同時に聞こえる。
呆けていると、彼は電話を切り、「邪魔するぞ」と入ってきた。


「て、店長!」

「今は片倉」

「どっちでもいいですよ。あの」


片倉さんは、右手に持っていたタッパを持ち上げる。


「消化の良さそうなもん持ってきた。ずっと寝てたんなら腹減ってねぇか? 食えそうなら少し食えよ。三食分くらい持ってきたから、残りは冷蔵庫入れとけ。残りモンだけど何もないよりいいだろ」


そして床に散らばっている薬や水、私の格好を見てため息をついた。


「おまえ着替えもしなかったの? そこにぶっ倒れるのが精一杯だったって感じだな。そこまでひどくなる前にちゃんと言えよな」


片倉さんはズカズカ入ってくると、冷蔵庫にぬるくなってしまった水をしまう。


「その調子じゃ薬も飲んでねぇんだな?」


そう言うと、持ってきたというタッパから、茶碗一杯分だけ移し替え、レンジにかける。


「ほら食え。刻んできたから食べやすいぞ」

「あ、ありがとうございます」


何故か当たり前のように世話を焼かれている。
その前に色々聞かなきゃいけない気がするんだけど、頭が回ってないよー。

渡された茶碗には、鍋のだし汁をベースとしたおじやが入っていた。
残り物の具材は小さく刻まれていて、スプーンですくうとつるりと口に入ってくる。


「あ、美味しいです」

「そりゃな。俺が作ったんだから」


すごい自信。でも片倉さんらしいや。

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