有害なる独身貴族
「食ったら薬な。おまえ身長いくつよ」
「153ですけど。なんで身長?」
「お子様サイズか大人サイズかってことだよ」
「酷い! 私ちゃんと大人ですよ」
「んなこたぁ分かってるよ。でもその身長なら普通に大人の量じゃ効き過ぎるだろうが」
「そんなこと……」
……あるかな。そういえば薬飲むといつもすぐ眠くなる。
あれって効きすぎってことなの?
「こんなもんかな」
片倉さんは錠剤を半分にすると一個半をグラスに入った水と一緒に私に渡した。
「後は着替えか。流石にそこは手伝えねぇな」
「当たり前ですよ。それより仕事終わったんですか」
「ああ。そっちは気にしなくてもいいよ。明日、熱下がっても休め。光流に任せときゃいい」
「またそうやって数家さんをこき使う」
「使える男だからな」
なんか。
自分の部屋で、こんな夜中に片倉さんと話しているなんて凄く不思議だ。
遠慮がないのか彼は帰る気がなさそうだし。
とりあえずこれを食べてしまおう。
お腹の中があたたまる。
傍で誰かが話していてくれる、茶碗一杯分の時間がとても幸せに感じた。
「これがつぐみのばーちゃん?」
「ええ」
入り口に飾ってある、おばあちゃんの写真。
それだけを飾っている事を不自然に思われなきゃいいけど。