有害なる独身貴族
7.お試しとかは結構です
翌日、目覚めた時には体が軽くなっていた。
私はもともと健康だ。
小さい時に余り栄養を取っていなかったはずだけど、それが体に耐性をつけてしまったのかも知れない。
たとえ食べる量が少なくても割と元気に過ごせる。
冷蔵庫を開けると、タッパが二段になっておいてあった。
“ちゃんと食えよ”って言うメモ付き。
しかも同じものかと思いきゃ、それぞれ味が違うらしい。
冷蔵庫の前で思わず笑ってしまう。
まるでおばあちゃんみたいだなぁ。
早速、お皿に移してレンジにかけ、その間にトイレにいく。
途中で鏡を見ると目が腫れぼったくなっていた。
昨日、久々に泣いちゃったもんなぁ。
でもお陰でスッキリした。
どうせ今日は休めって言われてたし、明日からまた何もなかったように頑張らなきゃ。
後は水分補給だ、と再び冷蔵庫に向かう。
ドアポケットに収まっている水のペットボトルを見て、上田くんのことを思い出した。
昨日のアレは、やっぱり告白……なんだよねぇ。
でもなんかサラッと言われたし、全然実感も沸かない。
全くのノーマークの人から告白されるとこんな感じなんだな。だとしたらきっと数家さんも私に告られた時にはさぞかし面食らっただろう。
正直、上田くんのことはなんとも思っていない。
今も、嬉しいとかよりは戸惑いのほうが強い。
だから断ればいいだけなんだけど、同じ職場で気まずくなるのも嫌だしなぁ。
どうすれば上手く収まるんだろう。