有害なる独身貴族


『……どうしてだ』

「おじいちゃん」

『どうして転職なんかした。お前のことをあんなに心配していたのに、どうしてばあさんの言うことが聞けなかった』

「ご、ごめんなさい」

『お前のせいで、ばあさんは死んだんだ』


それを最後に、電話は切られた。
ツーツーという電子音は、私の脳内を無情に切り裂いていく。


呆然としているうちに、お通夜もお葬式も終わったらしい。
おじいちゃんは私を呼びには来なかった。

無断欠勤を続けた私に、「もうやる気が無いなら来なくていいよ」と前の職場の人は言った。

辞めることが決定した後だったからというのもあって、それはあっさりしたものだった。


そしてその間も、私はご飯を食べた。

おばあちゃんはもう食べれないのに、お腹が空いてたまらなくなって、白いご飯を口にする。
生きることへの欲求を捨てられない自分が、無性に嫌になる。


こんな私に、生きてる価値なんて本当にあるの?


泣きながら食べるご飯はしょっぱく感じた。
それでも、お腹に物が溜まってくるにつれ、思い出すのは片倉さんの言葉で。


『生きなよ』


いいの?
私、生きてて本当にいいの?


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