腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
翌日。
昨日の夜、ウサギはぐっすり眠って、1度も起きなかった。
僕はホッとすると、同時に、もう、僕の手はいらないのかも。
と思って、チョットだけ、寂しい気がする。
ウサギは寮に帰る準備をしている。
少しは寂しいって思って欲しい。


夕方、ウサギと一緒にリュウの住むマンションに向かう。
リュウは何代も続く医者の家系の出身で、
父親は有名私立大学の医学部長だったし、(5年前に亡くなっているが)
母親は大手医療機器メーカーの創業者の直系の出身で、かなりの金持ちだ。
きっと、奈々ちゃんに出会っていなければ、
この地方病院に戻ってくることは無かったと思う。
タワーマンションのセキュリティの高い、かなり高級な上階の
数件しかないメゾネットタイプの部屋を購入して、新居にしている。
(そのマンションの1番上の階は桜子先生の新居だ。)
まあ、僕のような、サラリーマンの家庭で育って
学校も国立を選んで、奨学金を利用するような奴とは違う。
マンションのコンシェルジェに、エレベーターに案内されながら
改めて思う。
ウサギは目を丸くしながら、隣に立ってエレベーターを待つ。
コンシェルジェがエレベーターの外についた操作パネルで、
25階に止まるようにしてくれた。
ウサギは
「リュウ先生って、すっごくお金持ちなんですね。」と小さい声で言うので、
「リビングの横の窓から、奈々ちゃんの好きな河がよく見えるから、
選んだみたいだよ。まあ、僕の収入じゃあ、とても手に入らない。」
と、顔をしかめていったら、
「先生がこんな家に住んでなくって、よかった。
緊張しすぎて、のんびりできなさそうです。」と笑ったので、
「僕もここに来ると、結構緊張する。」とちょっと、笑った。





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