腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
昨日の当直は忙しかったなと、欠伸をする。
電子カルテの記入をしながら、横目で見ると、
日勤にやって来たリュウが
昨日受診した患者と入院患のカルテと、医師の指示と
全てのカルテをチェックしている。

リュウの横顔は相変わらず男前だ。
この病院のイケメンの2枚看板と呼ばれたいる1人だそうだ。
(もう1人は事務の東野壮一郎。内科医で院長の娘、東野桜子の夫。王子系。将来この病院の経営を任される予定。)
185センチの身長に筋肉の乗ったデカイ身体。
リュウが歩くと、周りいる女達は足を止め、そっと視線を送る。
顔の彫りは深く強い光を持った瞳と、固く結ばれた唇は周りを寄せ付けないオーラ全開で、
救命のチーム内で見せる屈託のない笑顔や、
妻に微笑みかけるだらしない笑顔なんて、あまり知られていないので、
近寄りがたいく溜息だけがリュウの周りに響く。
それにひきかえ、この僕は、仔犬系の顔立ちなので、
気安く女の子達に声をかけられて、行く手を阻まれる事もしばしばだ。
面倒臭いし、リュウに
「何やってる、早く来い」などと、理不尽に怒られる。
やれやれ。

この病院の救命科の医師は2つのチームに分かれている
レッドチームは医師になって、13年目のリュウが頭で9年目僕がその下。
5年目の医師が2人と3年目が1人。後は研修医の2人。
ブルーチームは、11年目の2人が頭で、その下に3人付いている。
柳医長以下10名プラス研修医2名で構成されているっていうのが基本だ。

リュウの眉間のシワに
救命の医師達全員が緊張しているのがよくわかる。
今日呼ばれたのは若手の2人。
他の奴らはあからさまにホッとして、自分の仕事に戻っていった。
主任と教育係り兼ねている、アイツは救命科のナンバー2で
優秀で、仕事がよくできて、激アツな心を持っている。
まあ、さっぱりしている性格なので、後々まで、引きずることはないけど、
ヒトの命を預かる前線にいるので、ものすごく厳しい男だ。




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