腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
病院に着いた時は午後3時を過ぎていた。
非常階段にウサギの姿がない事を確認して、裏庭のベンチに座り込む。
何度電話しても、留守番電話のままだ。
寮に電話したら、帰寮していないと寮母さんにそっけなく返事をされた。
みぞれ混じりの雨が落ちてくる。
後はどこを探したらいいんだろう。
僕はウサギの事をちっとも知らないんだな。

公園。ウサギのお気に入りの公園があった。
僕は急いで、車に戻る。
かじかんだ手を擦りながら、僕はエンジンをかけた。

公園に着くと、本格的に雪になってきた。
暗くなる前に公園を回らないと、見つけられなくなる。
そう思って、広い公園を走る。
誰もいない。こんなに寒くなったんじゃあ、当たり前だ。
ウサギは温かい場所にいるだろうか
後は、実家か。
僕が思いつくのはそれくらいだ。
友達の家にいるのかもしれないけど、
ウサギの友達なんて、しおりんしかしらない。

実家か。
知らない男が訪ねて行ったりしたら、きっと、変に思われる。
印象がものすごく悪くなるよな。
ストーカーに思われるかも。
でも、
仕方ない。
他にどこも思い当たるところはないんだから。

コートに積もった雪を払って車に乗り込む。
ウサギの実家に行こう。


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