腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
「そういえば、さっきコンビニでオヤジと妻に会った。」
と僕が言うと、リュウが笑って、
「あのオンナ、とんでもないヤツだよな。会ったばかりの時、
オヤジの前で俺を誘惑しようとしてたし。」
と顔をしかめる。僕はあっけにとられる。
「まあ、俺はナナコしか見てなかったから、知らん顔していたけど、
オヤジのオンナだなんて知らなかったし、
昔だったら、きっと、誘いにのってたと思う。
結構、遊びで付き合うには、いいオンナじゃん。
スタイルいいし、面倒くさくなさそうだしさ。
でもさ、
オヤジの気をひくのに、他の男を誘惑してたってことだろ。
下手したら、オヤジと俺、修羅場になるところじゃん。
まったく、冗談じゃないぜ。」と僕の顔を見る。
僕はやっぱり、とんでもないオンナだったと、ため息を吐く。
(…昔、僕は誘惑に負けています。それも、2回も。
今更、オヤジにばれませんように。とそっと思う)
「オヤジは父親になるらしいね。」と言うと、リュウは驚いた顔で
「…俺の子供って、オヤジの子供と、同い年?
同じ学校行ったら、いじめられそうだな。」と笑う。
まあね。
あの2人の子供なら、きっと、ガキ大将まちがいなしだな。
僕はクスクス笑って、医局のドアを開ける。

今日も頑張って、働くか。
仕事が終わればまた、ウサギに会える。
僕は自然に笑顔になった。

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