腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
僕は息を潜めてジッとする。
僕の目の前の廊下に走りこんで来た足音は、止まって、
キイ、っと音を立てる、思わずついたてから顔を出すと、
防火扉の小さなドアがあけられて、
白衣の背中が向こう側にくぐっていくのに出くわした。
パタン。とドアが閉じる。


驚いた。
防火戸が動くんじゃない。
そこについてる小さなドアに鍵がかかっていないのか。
唖然とした僕はそっと、ドアの取っ手を回すと確かに開く気配がする。
いや、
今はやめておこう。


それにしても、こんな小さな扉が開くなんて、
背が178センチの僕には、ちっとも思いもよらないな。
この扉は140センチ?130センチ?の高さしかない。
さっきの背中も、かがんで入っていってたし、
ぴょんといなくなった小さな白い背中を思い出す。


あれは、不思議の国のアリスに出てくる慌て者のウサギだ。
大変だ。遅刻するって、言ってなかったけどね。
とひとりでクスクス笑う。


もし、ここが僕の探していた場所だとすると、
きっと、リュウのヤツも奈々ちゃんがここをくぐっていくのを
そおっと見ていたんだろう。
だって、アイツは185センチもあるから、
この小さな扉をくぐって向こう側に行くなんて
思いもよらないだろうし。と考える。


そおっと扉をくぐる奈々ちゃん。
僕が先に出会いたかったよ。

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