腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
その夜、ツカサさんの腕の中で、
「ツカサさん、…今も、奈々さんはツカサさんの特別な人なんですか?」
とどうしても聞いておきたかった事を聞いた。
「うん?」と私の鎖骨に取り掛かろうとしていた、ツカサさんはちょっと、驚いた顔で、私の顔を見る。
「誰がそんな事を言ったのかな?」と不機嫌な顔になっていくのを
「ツカサさんが…」と言うと、
「僕?」とうーんとうなる。絶対、言いました。けど。
「私が奈々さんって素敵な人ですねっていったら、
あの人は特別だからって。そう言いました。忘れたんですか?」
「うーん?きっと、それって、僕にとってじゃなくって、
みんなにとって、理想に近いって事かな?
仕事が出来て、控えめで、料理が上手くって、いつも笑顔で、美人だってことなんじゃ…
ウサギ?怒ってる?」
ツカサさんは奈々さんを褒めすぎです。と私は機嫌が悪くなる。
「怒ってません!
ツカサさんがすっかり忘れていたような言葉を気にして、
ツカサさんの特別って奈々さんなんだって、
そう思って、私は奈々さんみたいになれないって、
オトナのオンナの人には程遠いって落ち込んで…
…ツカサさん、聞いてますか?」
ツカサさんは言葉の途中で、私の鎖骨に戻っていった。
柔らかい唇の感触。
「なーんだ。ウサギのヤキモチ妬き。」とツカサさんの笑った声。
なんですって!?
「男の理想の奈々ちゃんじゃなくって、僕はなぜかウサギが良いんだ。
なんでだろう?」とツカサさんは呟きながら、私の身体を撫でる。
「ツカサさん!」
「美味しそうなシャンプーの匂いのせいかな?」
「ツカサさん!」
「ウサギ、黙って。」と私の唇に柔らかくくちづけしてくる。
私はツカサさんのくちづけで手一杯だ。
「もう、忘れて。僕は覚えてない。」
とあっさり言い切って、私の胸のテッペンに唇を付けた。
もお、馬鹿オオカミ。
私は怒っていられなくなる。
一時休戦だ。



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