腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
紺のスーツに着替えていると、水色とグレーのチェックのシンプルなワンピースに着替えたウサギが
僕の前に立ち、綺麗にラッピングされた細長い箱を渡しながら、
「昨日は、渡しそびれてしまいました。」と言う。
ネクタイかな。箱を開けると、
グリーンとブルーとグレーのボーダーのトラッドなネクタイが出てきた。
「えーっと、ひねりも、遊び心もないモノしか選べませんでした。
次に選ぶときにはツカサさんに似合うおしゃれなモノをと、思いますが、
きっと、私では、駄目かもしれません」とうつむいた。
「僕は、見た目が軽そうに見えるみたいだけど、
中身は結構、融通がきかなくて、重たい男だよ。
妻が出て行ったのを引きずって、4年間誰の心も信じられなかったし、
やっと、6年目にウサギの出会って、ウサギの心が欲しいって思えたら、
ウサギのことばかり考えてる。
僕の中身はひねりもおしゃれも似合わない。」
ウサギがくれたネクタイを白いボタンダウンのシャツに当ててみる。
「どう?似合ってる?」ウサギは赤い顔でうなずく。
「これからはネクタイはウサギに選んでもらおうかな。
きっと、その方が僕の中身に似合うと思う。」と言うと、ウサギは
「責任重大ですね。」と、ちょっと顔をしかめた。僕は
「じゃあ、今まで通り、店の女の子に頼む?」と聞くと、
「それはイヤです。」と言って、頬を膨らませる。
「奈々さんや、桜子先生に意見を聞きます。」と言ったので、
「あの人達の夫とお揃いはやめてね。」と笑って、ウサギの頬にキスをした。














< 162 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop