腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
僕らはウサギのお気に入りの公園にいた。
天気が良くて、ゆっくり散歩すると、良い気持ちだけど、
こんなに寒いと、すれ違う人もいない。
ウサギと指を絡めて、僕のコートのポケットに入れる。
そっと、ウサギの小指の指輪を指でなぞると、ウサギは赤くなって、
「男の人にアクセサリーをもらったのは初めてです。」と微笑んだ。
喜んでもらえてよかった。
仕事の時には首に下げておけるようお揃いのチェーンも一緒に渡してある。
僕らの仕事先でつけるのを許されているのはマリッジリングだけだ。


眺めのいい、展望台にたどり着く。
ここからは、僕らが住む町と大きな川が光っているのが遠くに一望出来る。
僕にとってもお気に入りの場所になりそうだ。

僕がウサギにマリッジリングを贈るのはいつになるかな。
あんまり遠くない将来がいいけど、ウサギ次第だ。
ウサギの顔を覗き込むと、にっこり笑って首を傾げる。
かわいい、立ち止まって、短くくちづけると、ウサギは真っ赤になった。
僕はクスクス笑う。
「毎日キスしてるのに、毎回赤くなるのはどうしてかな?」
「だれだって、急にキスされたら、恥ずかしいと思いますけど。」と俯くので、
「急にキスされるのは嫌?」と聞くと、
「…嬉しいです。赤くなっちゃ、駄目ですか?」と僕を見上げるので、
「赤いウサギも好きだよ。」としっかりと抱きしめてもう1度長いキスを交わした。
ウサギは背伸びをして、僕の唇に応える。
随分とキスが上手になった。僕を夢中にさせる。
ゆっくり唇を離し、
「僕はウサギが好きだよ。」と耳元で囁くと、
「私もツカサさんが大好きです」と僕の目を真っ直ぐに見て微笑む。
僕はやっと緊張がほぐれてきたかな。

「ウサギ、ケーキ食べる?」と聞くと
「ツカサさん、2個食べてもいいですか?」と笑って、僕の手を引いて走りだした。
< 163 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop