腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
第11章 機嫌の悪いオオカミ

その35。ミウ

4月になった。
私は2年目のナースになった。
後輩も入ってきた。
しっかりしないと。いつまでも、1番下じゃあない。

「ミュー、お昼ご飯、奈々さんのところに行く?」
としおりんに言われて、私はうなずく。
奈々さんは産休でいないけれど、
時々リュウ先生が奈々さんが作ったご飯を持ってきてくれる。
昨日の夜、奈々さんからご飯食べてね。ってメールが来ていた。
病児保育室の休憩室はやっぱり、特別な場所だ。
奈々さんがいなくっても、笑い声が溢れている。
当直明けのツカサさんも、そこで食べる予定だ。

ツカサさんは3月で35歳になった。
私はお揃いのマグカップを贈った。
お祝いは初めて泊まったホテルの部屋に再び泊まることにして、
ツカサさんはリベンジだと言って、私をほとんど、ベットから出さずに過ごした。
やっぱり、ツカサさんはオオカミだ。
目が覚めたとき、私の右手の薬指には
私が初めて見るような大粒の、美しいカットのダイヤモンドのリングが付いていた。
私が驚いて、指輪を見つめていると、
「やっぱり、エンゲージリング渡しておきたいと思って。
美雨は僕のモノっていう印です。
男よけになると思うから、仕事のとき以外は必ずつけておいてね。」
と笑って、また、長いくちづけをした。
嬉しい。
私の左手の薬指のマリッジリングはツカサさんの小指についていたものだ。
時々そっと、撫でてみる。
ツカサさんがずっと、一緒にいてくれると約束してくれた指輪。
右手の薬指のエンゲージリングは私がツカサさんのモノだという印の指輪。
どちらの指輪も私の宝物だ。




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