腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
研修医が操作室にやって来る。
僕の顔を見て、ちょっと驚いて会釈して、技師の隣に立ち、
その後ろから、ウサギも入ってきた。
ウサギは僕を見て、驚いた顔をして、俯いて、離れた場所に立つ。
やれやれ、そんなに離れて立ったら、不自然だろう。
造影検査が始まって、
研修医が患者に声をかけながら、検査を始める。
突然患者が、咳き込こんで、うめく、
僕らはハッとする。
アナフィラキシーショックの前兆だ。
処置を急がないと、そのまま死に至ることもある。
ウサギ以外は、検査を中止し、CT室に飛び込む。
1年目の彼女にはきっとどうしたらいいかわからないだろう、
僕は大声で、
「ウサギ、救急カート持ってこい!」と大声で叫ぶ。
ウサギは戸惑った顔をしたが、僕が彼女を睨んだので、
弾かれたように、走って、救急カートを持ってきた。
患者はまだ、意識がある。
僕は酸素マスクで、酸素を多量に流し、
研修医に薬品の準備をさせ、
造影剤を注射器で引きながら、
何も入っていない輸液に切り替え、全開で落とし、
緊急用の薬品を患者に注入した。
研修医に担当医に連絡させ、
ゆりちゃんに救急外来の処置室に連絡を頼む、
ブルブル震える、ウサギに
「これから救急外来に移送する。
酸素ボンベがついたストレッチャーが廊下にあるから、
急いで持ってきて。」と優しく言った。
ウサギはこくこく頷き、走っていく。
患者に声をかけると、ハッキリ返事をしたので、安心する。
もう、大丈夫だろう。
念のため、しばらく様子をみて、病棟に帰そう。
「造影剤が身体に合わなかったみたいです。
少し休んでから、病棟に戻りましょう。」にっこり笑いかけると、
安心したみたいだ。
ウサギが持ってきたストレッチャーに患者を移して、救急外来に移動する。
連絡を聞いて、リュウが急ぎ足でやって来た。
僕がいるのを見ると、なあんだ。って顔をして、
患者の顔色を確認し、先に立って、歩き出す。
緊張した研修医の肩をたたくと、ホッとした顔をして
「ありがとうございました。」と僕に頭を下げた。
「後は救急外来で引き取る」と
CTの次の患者の検査を続けさせることにした。
僕はウサギに
「病棟に救急外来で休ませるって連絡して。」と言った後、
小さな声で、
「勤務終わったら、あの場所に来て」と続けた。

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