腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
看護師寮に戻ると、しおりんがやって来た。
なかなか帰らない私を心配してくれたみたいだ。
私はすっかりお腹が空いていたので、
インスタントラーメンを作る事にした。

看護師寮は病院から歩いて10分位で、
6畳の部屋にトイレと、キッチンというには狭すぎる
電熱コンロがひとつついている部屋がずらりと並んでいる。
まあ、食事は前日に申し込めば夕飯に食堂でいつでも定食が食べられるし、
病院には栄養士さんが管理する職員食堂もある。
お風呂は24時間入れるようになっているし、共用の洗濯機置き場や乾燥室もある。
1年目から3年目のナース専用の寮母さんがいる看護師寮になっている。
不規則な生活を初めて送る私たちには大きな助けになる場所だ。

電熱コンロにお鍋をかける。
あんまり料理は得意じゃないけど、これくらいは作れる。
ふーふー冷ましながら、しおりんと分けあって食べた。

しおりんが
「救急外来に行ったんでしょう?リュウ先生ってみた?」と聞く。
しおりんの情報によると、
うちの病院のイケメンの2枚看板って、
言われてる救命の先生らしい。
もうひとりは事務の職員担当もしている東野壮一郎さんで、
内科の桜子先生のご主人だ。
もちろんカッコイイ。
長身、細身で眼鏡の奥の切れ長の瞳が特徴。
サラリとした前髪を掻き上げる仕草がセクシーと言われている。
おとぎ話に出てくる王子のようだ。
私はちょっと考えて、
「見た!」と言う。
そういえば、菅原先生と話していた先生は
背がものすごく高くて、がっしりしてて、
顔もくっきり、はっきりしてた。
ワイルドな大人の男の人。
しおりんが
「カッコイイ?」と確認する。
「すごくカッコイイけど、ものすごく近寄りがたいかんじ。
菅原先生の方が、親しみやすい」と言うと、
「菅原先生?バツイチオオカミってよばれてる?」と私の顔を見るので、
「森本先輩もそう呼んでた。」と笑って、
「でも、ちっとも怖くなかったよ。」と感想を述べると
「そーいうのが、1番危ないんだって。」
と大人の顔で私の背中を叩いた。
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