腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
CT室に顔を出すと、
今日の担当もゆりちゃんだった。
「よ。」と僕が手を上げて挨拶すると、
「この間はどうもありがとう。
菅原先生がいてくれて、すごく助かった。」
とニッコリ笑いかけてくる。
「ゆりちゃんのお役に立ててよかったですよ。」と微笑むと、
上目遣いで僕を見た。
こういう顔の時、このヒトはちょっと危険かな。
と僕は覚悟する。


検査の合間に
「ねえ、ツカサくん、この間はなんでここに来たのかなって
考えたんだけど…あの新人ナースに会いに来たの?」と
あいかわらず、直球のひとだ。
「そうだけど、別に、女としてみているわけじゃないよ。」
と答えると、
「あの子のこと、ウサギって呼んだでしょう?」と言うので、
「名前、知らなかっただけだよ。」とため息をついた。
「まあ…確かにオドオドして、ウサギっぽいか。」
とゆりちゃんは笑った。


しばらく検査を続けてから、
「ツカサくん、もう、私とは寝ないの?」と僕の顔を見るので、
「だって、ゆりちゃん、去年結婚しちゃったじゃん。」といって、
「僕は人妻とは関係しないって決めてる。」と笑っておく。
「じゃあ、ナナコちゃんは?」と痛いところを突いてくる。
「あの人は僕のことなんて、はじめっから、相手にしてない。」と
僕が認めたくない事実を口にする。ゆりちゃんは
「それはお気の毒。」とちょっと、同情してくれた。
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