腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
数日後の当直明け。
また、昼まで仕事が終わらなかった。
どうせなら、奈々ちゃんの休み時間に会いに行ってから、帰ろうと思って、
非常階段にやって来た。
座り込むと風が気持ちいい。ウトウトと眠くなる。
僕はすっかり眠り込んだみたいだ。

「…センセイ、菅原先生、返事してください。
先生!?救急車呼びますか?先生!?」と言う大声に起こされる。
ウサギの声だ。ここに救急車はダメだろ。
ゆっくり目を開けると、
ウサギが僕の上に屈みこんで、目に涙を一杯ためている。
「こら、ウサギ。寝てるのと、死んでるのとお前は区別がつかないのか?」
と不機嫌な声を出すと、ウサギは
「ぐっ、具合がわるいのかとっ」と言って、ポタポタ涙を落とし、
僕の胸にしがみついて、声を出して泣いた。
おいおい。


髪から、甘い匂いがする。イチゴ?モモ?
どっちにしろ、
奈々ちゃんのローズの匂いとは大違いだ。
とため息の後、僕は髪の匂いをゆっくり吸い込んだ。



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