腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
随分と軽いんだな。
もうちょっとボリュームのある太ももが好ましい。
と思いながら
会議室の間を抜ける。
ウサギは
「菅原先生、どうして、私をウサギって呼ぶんですか?」と聞く。
まあ、当然の疑問だ。
「名前知らない時に、ウサギに似てるなって思ったから。」と言うと、
「因幡(いなば)の白うさぎ?」と聞かれて、ぷっと吹き出す。
「いや、ウサギの皮をはぐ趣味はないよ」と笑った声が出る。
「不思議な国のアリス。いっつも走ってるから、あわて者のウサギに見える。」
と言うと、ウサギは溜息をついて、
「…あわて者のウサギかあ…」と考え込んで、黙る。
おっと、傷つけたか?僕は
「急いでいる後ろ姿が可愛かったんだよ」と言いなおすと、
「いいですよー、言い直さなくっても。私って、直ぐに慌てちゃうんですよねえ」
とまた、溜息をついた。僕は
「ヒトは、どんなことでも、最初っから上手く出来るわけじゃないよ。
失敗したら、繰り返さないようにすれば少しずつでも前に進める。」と言うと、
「先生も失敗した?」と、小さな声で聞いてくる。
「そりゃあ、呆れるほどね。」と返事をすると、
また、黙ってしまう。何か考えてるのかな?顔が見えないから
よくわからない。

エレベーターを降りると、周りに注目されまくりだ。
やれやれ、
また、よくない噂になっちゃうかな。
急ぎ足で救急外来に向かう。
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