腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
ウサギの歩くのに合わせてゆっくり歩く。
「タクシー呼ぶから。」と言ったら、横に首を振ったので、
僕は溜息をついて、立ち止まる。ウサギは口をきかない。
しおりんが
「早く帰りたかったから、助かりました。
西野先生苦手で。…本当は私は明日お休みなんで、
彼氏が迎えに来てくれてるんです。」
と、僕に笑いかける。
まあ、彼女のように大人っぽくて、しっかりした女の子には
はやばやと、恋人がいるんだろう。西野、残念だったな。
しおりんは迎えの車がやってきて、手を振って去って行った。


僕はタクシーを捕まえ、ウサギを車に押し込む。
「どこに住んでるか、言って。」と僕が黙ると、
ウサギは看護師寮の場所を説明した。
「ウサギ、足はもう痛くないの?」と聞くと、
「ずいぶん良くなりました。ありがとうございます。」
と小さな声で行った。
「お前の仕事は立ち仕事なんだから、仕事が終わったら、
足を休ませないとダメだろ。」と言うと、
「すみません」と僕の顔を見ずに返事をした。
やっぱり、少し強引だったか。と後悔する。
あんな風に連れ出されたら、嫌だよな。
でも、隣にいた研修医と楽しそうに話してるのが
気に入らなかった。


ウサギは急に僕を見上げて、
「奈々さんって人と話しました。すごく素敵なひとですね。」
と言う。
「あの人は特別だから。」と返事をしたけど、
ウサギが元気がないことが気になる。僕は
「なんかあった?」と聞いたけど、
「何にもありませんよ」と無理に笑ったような気がした。
どうした?ウサギ。





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