腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
カチャリとドアの開いた音がする。
僕は浅い眠りの中でウサギの気配を感じる。
ウサギは数を数えている。
ああ、呼吸数だな。僕が死んでいないかの確認かな。
と、タヌキ寝入りを決め込むことにした。
ウサギが僕の腕にそっと触る。
あいにくそっちの腕には時計をしてるから脈は、手首で測れないよ。
と、ウサギの髪の甘い匂いが強くなる。
なるほど、心臓の音をダイレクトに聞く作戦か。
薄く目を開けるとウサギのが、僕の胸に耳を付けるところが見えた。
僕の心臓の鼓動が急に速くなる。
マズイ。
ドキドキしてるのがウサギにバレてしまう。
「ウサギ」と僕が呼ぶと、パッと顔を上げ、
「よかった。寝てたんですね。」と笑顔をみせた。
ああ、僕はこの笑顔が見たかったんだな。


また、ウサギは慌てて僕から離れようとする。
でも、大丈夫。今度は落っこちないように、
ウサギの後ろに腕を回してある。
ウサギの身体が後ろに傾いたので、
僕はウサギをぎゅっと引きつけた。
ウサギが僕の胸に倒れこむ。
顔が近い。
真っ直ぐ見つめあう。
アウトだウサギ。
この状況では、キスされても文句は言えないだろう。
柔らかそうな唇。と思ったけど、
「また、階段から落っこちたいの?」と不機嫌な顔を作る。
ウサギは
「すっ、スミマセン」と真っ赤になった。

やれやれ、
いったい僕はどうしたんだ?
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