腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
非常階段の扉をそっと開けて、階段の上を見ると、
菅原先生がいた。
また、階段に寄りかかって、目を閉じている。
そっと近づく。
きっと、この間みたいに眠っているだけだと思うけど、
眠っているだけだって、確認したい。


呼吸数を数える。
脈に触れようとしたら、時計が邪魔をする。
男の人の時計って大きい。
菅原先生は細身だけど、私より、
手首がずうっと太そうだ。
私は脈を測るのを諦める。
そうだ。
聴診器は持っていないけど、直接心音を聞けばいい。
そおっと、耳を胸に当てる。
菅原先生のシャツは私の知らない匂いがする。


「ウサギ」と、呼ぶ声がした。
よかった。やっぱり寝ていただけだ。
菅原先生の笑顔が嬉しいと思ったけど、
これは
近づきすぎだって、慌てて離れようとしたら、
身体が後ろに傾いて、階段から落ちそうになった。
でも、菅原先生が助けてくれて、
今回は階段から落ちなくて済んだ。
菅原先生の顔が、すごく近くて緊張したけど、
落っこちなくてホッとする。
やっと、足が治ったたばかりだ。




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