腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
その夜ウサギは僕の当直の日付を聞く短いメールを送ってきて、
僕が当直明けの時に合わせて、
お弁当を作ってくれる様になった。
おにぎりと卵焼きは変わらず入っていて、
僕はウサギの作る卵焼きが好きになった。

ウサギは顔を赤くして、僕の隣に黙って座っておにぎりを齧っている。
口が小さい。やっぱりうさぎっぽい。と笑顔になる。
僕は緊張しているウサギに少しずつ話しかける。

ウサギは時折つっかえながらも僕の瞳を真っ直ぐに見て、返事をする。
仕事のことや、始めたばかりの1人暮らしの戸惑いを
素直な言葉で僕に話す。自分を良く見せたり、女の顔をみせることはない。
始まったばかりの社会人としての責任や、希望を
明るい声で僕にそっと、教えてくれる。

僕も、昔の自分を思い出したりして懐かしい気分になって、笑ったり、
ウサギの悩みに少しだけ、アドバイスしたりする。
でも、アドバイスなんて、必要ないな。自分で答えを見つけるまで、悩んでいればいい。
そうも思う。
ウサギの真っ直ぐな眼差しはきっと、自分で答えを見つけ出せる。
ウサギの笑顔に僕も笑顔になる。
君はきっと大丈夫。

きっと、ウサギは真っ直ぐに生きていける。
周りのヒトはきっと君を好きになるよ。
君の誠実な人柄と、綺麗な真っ直ぐな瞳は
きっと周りを笑顔にする。

そう思いながらウサギの瞳を覗くと、
ウサギは真っ赤に頬を染めた。






< 52 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop