腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
ウサギの休みに合わせて、年休を取ることにして、
救急外来に人数がいて、迷惑にならなそうな日に
リュウに用があるから、休んでもいいかな?と聞いたら、
二つ返事で許可された。リュウに
「夏休みはいつとるんだ?」と聞かれて、
そういえば夏休みとっていなかったな。
と気づく。
特に休んでしたいこともなかったから、すっかり、後回しにしていた。
来月は休みを合わせて取って、また出かけるか。
とすっかり、ウサギと、また出かけるつもりでいる自分に気づく。


イヤイヤ、違うだろう。
奈々ちゃんに振られた時、このまま奈々ちゃんを好きでいれば、
今後、面倒な自分の気持ちに振り回されることもない。って思ったはずだ。
だって、奈々ちゃんは僕に振り向くことは決してないから、
ずっと、穏やかな気持ちで居られる。


相手の気持ちを手に入れたいと思う苦しさや、
思い切り抱きしめたいという欲望や、
この腕の中で穏やかに眠って欲しいという願いや、
誰にも奪われたくないと嫉妬する焦燥や、
そんな思いはもうたくさんだ。
そんな感情は欲しくない。って、
そう、思ったはずだ。


あわて者の小さなウサギ。
僕は彼女の笑顔を思い出して、
温かい気持ちに包まれる。


ずいぶんと年下なのに
そばにいて、ウサギの笑顔が見たいと思っている。
僕は大きくため息をついて、
自分の気持ちを確かめる時が近づいていることを考えた。

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