腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
ウサギは運転しないの?」と聞くと、
「中学から、私立の女子校で、車の免許を取るのは学校の規則で、
禁止されていたし、
看護科の大学もすごく忙しくって、取る暇はなかったんです。
きっと、運転できたら、便利だろうけど…」と言ったので、
「昔のボーイフレンドは運転しなかったの?」と聞くと、
「ボーイフレンドなんて、いません。」とうつむいた。
「最初に会った時男の名前をいったでしょ?」と不思議に思うと、
「シオン君は、アイドルのストームっていうグループのメンバーです。」と
小さな声で言った。
僕は笑ってしまう。
「そのアイドルに僕は似てるの?」とウサギを横目で見ると、
「すごーく似ています。」と顔を赤らめる。ふーん。
「シオン君って、ビジュアル担当?」
「えーと、それはカオル君です。」と言う。
「歌が上手いとか?」
「それはショウ君です。」
「じゃあ、何が得意なの?」とだんだんと腹がたってくる。
「あんまり、目立たないけど、私はシオン君の笑顔が好きなんです。」
「取り柄がなさそうだけど、1番好き?」と聞くと、
「1番好きです。」とムキになって返事をするので、
「僕に似てるんだ?」と笑った声で聞くと、
ウサギは真っ赤になって黙った。

なるほど。

僕は上機嫌だ。
平日の海沿いの道は空いていて、気持ちがいい。
ドライブ日和だ。
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