腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
夜勤の後、更衣室で着替えていると、
「天野さん?」と声をかけてくる人達がいる。
知らない人達だ。
2人とも、白衣だから、ナースだよね。20代後半かな?
「はい」と返事をすると、
「菅原先生と付き合っているの?」と聞いてくる?
「…いいえ。」と答えた。
「でも、車に乗ってたって見たひとがいるの。
菅原先生は子どもは相手にしないの。
それに、1回寝たらおしまいよ。」と静かな声で言った。
私は声が出ない。

「ちょっと、そこのふたり。子ども相手に何やってるの?」
と、声がかかる。
放射線技師のゆりちゃんって呼ばれてる人だ。
ナース姿のひとりが
「事実を教えておいただけよ。」と硬い声を出す。
ゆりちゃんはため息をついて、
「あのね、ツカサくんはそーいうことを言わないオンナと寝るのよ。
あなた達とは寝てないんじゃないかしら?
それに私とは1回きりって、訳じゃあないし。」とニッコリ笑う。
ふたりは何も言い返さず、いなくなった。
ゆりちゃんは、頭を振りながら、
「まったく。躾のわるいオンナどもね。
まあ、ツカサくんがモテるって事だから、我慢して。」
と私に笑いかけ、
「ツカサくんは去年の春から、
遊びのオンナノコとつきあってないわ。
もちろん私とも。
去年から、ツマラナイ男に成り下がっているので、
誰からも相手にされていないと思うわ。」
と言って、手を振っていなくなった。


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