腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
「元気だった?」と先生は私に笑いかける。私が頷くと、
「僕はこの通り、体重が3キロも減ったし、
そのうち、ストーカーになるんじゃないかって、
自分を心配した。」と私の顔をじっと見る、
「どうしたんですか?」と私が心配になって聞くと、
大きくため息をついて
「ウサギに会いたかった。ウサギの作った卵焼きが食べたかった。
ウサギの笑顔が見たかった。」と言って、
私の手を掴んで引き寄せ、
「僕はウサギの全部が欲しいよ。」と私をしっかり抱きしめた。
私は驚いて、顔が赤くなる。
いままで私にそんな事を言った人はいない。
私の全部って何だろう?
それって、…それって、私を抱きたいってこと?
「…私は先生が付き合ったきたオンナの人達みたいに大人ではないですけど。」
と言ったら、
「それって、何か問題ある?」と頭の上で声がする。
「…もっ、問題があるかどうかもわかりません」と言ったら、
菅原先生は笑い出し、
「なんで今まで、連絡をしてこなかったの?」と聞く。
「…先生はオトナのオンナの人しか相手にしないって聞いたので…」
「…そっか。今日はどうして連絡をくれたの?」とそっと、私の頬を撫でる。
私はますます緊張する。
「えーっと、最近寒いから、ここでお昼寝すると風邪を引いちゃうかなって思って。」
「僕のこと、心配してくれたのかな?」と聞かれ、
私は頷いた。すると、
「今日のところはそれで満足ってことにしておくよ。」
と私からそっと身体を離した。
私はちょっとホッとする。
私の心臓の音はやかましいくらいにバクバクいっていたから、
先生に聞こえやしないかと、ヒヤヒヤしていたのだ。
「菅原先生。」
「ふたりの時は、ツカサって呼んで。」と私の顔を覗く。
「…ツカサさんは、私の事が気にいった。って事ですか?」と、勇気を振り絞って聞くと
「…そういう事だね。僕はウサギが好きだよ」とまっすぐに見つめてくれる。

そうなんだ。
私のどこが気にいったんだろう。顔?身体?そう思ったけど。
「少し、考えても良いですか?」と聞くと、
「前向きに検討してください。」とニッコリした。


1回寝たらおしまい。
その言葉が、私の耳に聞こえた気がした。






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