腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
「あいつ、おかしくないか?」と指をさす。
指の先を見ると、ウサギが松葉杖で、腕に包帯を巻いた
若い男に手を貸している。
僕は弾かれたように走り出した。
杖のつき方がおかしい。
ウサギは身障者用のトイレに向かっている。
待て。そいつは注意のメールで最近回ってきてた不審者じゃないか?
怪我人を装って、若い女の看護師や介護人をトイレに案内させて襲う。
そんなとんでもないやからじゃないのか?
僕は身障者トイレのドアが自動で閉まる前に腕を突っ込んだ。
間に合った。
息を切らしながら、ドアをこじ開ける、
ウサギが驚いた顔で僕を振り返る。
「僕がお手伝いしましょう」と切れ切れに言うと、
そいつは掴んでいたウサギの肩を突き飛ばし、
松葉杖を振り上げた。
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