腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
仕事がやっと終わって、着替えていると、
同じ内科病棟に勤める同期の夏井 詩織(なつい しおり)が
顔を覗かせた。


「ミュー。帰れる?」と笑顔だ。
背が高くてスタイルが良くて、サラサラのロングヘアーで大人っぽい。
そして、美人で、ソツがない。


私は155センチしか身長はないし、細すぎるし、
髪はショートカットの癖っ毛だし、仕事が遅い。
そして、当然子どもに見える。


「…しおりん」と抱きついて、涙がこぼれた。
しおりんがヨシヨシって言って、頭を撫でてくれる。
「今日の森本先輩は迫力あったねえ。」と慰めてくれる。
森本 今日子先輩(5年目のナース)は病棟の教育係りだ。


私は今日、担当以外の部屋のシーツ交換の手伝いをしていて、
自分の担当の患者さんの検査の時間に検査科に送っていくのを
忘れてしまっていたのだ。

< 8 / 185 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop