腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
診察室に戻ると、奈々ちゃんも部屋にいた。
リュウの怪我の様子を見に来たけど、あんまり元気で拍子抜けしたみたいで、
ウサギの方を心配したみたいだ。
僕がウサギの顔を見ると、ゆっくりと、目を開いた。
僕と目があうと、
「ごめんなさい。」と泣き出した。僕は彼女のそばに座り、
「ウサギのせいじゃない」とそっと、声をかけたが、次第に泣き声が大きくなる。
奈々ちゃんが、僕と、涼子さんを部屋から出す。
涼子さんは
「子どもは奈々ちゃんの専門。泣けた方が心のためには良いわ。」
と笑って、処置室に戻って行った。
僕は部屋の前でウサギの泣き声をじっと聞いた。
苦しい。僕がそばにいて、抱きしめたい。


やがて、泣き声がおさまってきた。
奈々ちゃんが出てくる。
「菅原先生。ウサギちゃんは実家には知らせないで欲しいって、言ってる。
私の家に連れて帰っても良いけど…」と僕の顔を見る。
「休みをもらった。1週間そばにいられる。」と言うと、
「大切に出来る?」と聞くので、
「誓います。」と真面目に答える。
「自分で言ってみて。」とドアを開けて、中に一緒に入った。
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