腹ぺこオオカミはご機嫌ななめ
突然ウサギは立ち止まって、ブルブル震えだす。
きっと、怖かった出来事を思い出してしまったんだな。
そっと手を握ると、涙が溜まった目で僕を見上げ、
「菅原先生。私を庇って、背中、松葉杖で殴られましたよね。痛かったですよね。」と涙が転がり落ちる。
「大丈夫だよ。痛くないから。」
「見せてもらってもいいですか?」と言って、僕の後ろに回る。
背中見せるの恥ずかしいだろ。と思ったけど、ウサギは大胆に僕のTシャツをめくって、
赤黒く内出血している部分をそおっと撫でる。
ウサギの柔らかい指の感触。
「…大丈夫…ですか?」と小さな声で聞く。
「だ、大丈夫。」と背中をしまって、ウサギに向き直る。
真っ直ぐに見つめてくるウサギの潤んだ瞳。
ちょっと、ヤバイ状況だ。
鼓動が跳ね上がる。
こら、ウサギ、僕の襲わないって決心を鈍らせないで欲しい。

僕は唐突に立ち上がり、
「コーヒー淹れるけど、ウサギも飲む?」とかすれた声で聞いた。
ウサギは涙を拭いて、うなずく。
アブナイ。

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