Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
「香田、教室に戻れ。後で話聞く」
小笹先生が言った。
「矢倉は体育課…なにやってんだ。早くしろ」
耳にユリエちゃんの声が張り付いて消えない。
自分が歩いている感覚がなかった。
私のせい…
私がしっかりしてないせい…
もっと…もっとちゃんとしないと…
こんなんじゃダメ…
教室になんて戻りたくない。
だけど、どこに行くの?
どこに私の居場所がある?
誰もいない場所に行きたい。
誰も私のことを忘れて。
その時初めて、私は本当の私になれる気がする。
後夜祭には出ずに、家へ帰った。
仕舞ってあったネックレスを千切って、公園の森の中へ放り投げた。
ー無理とかじゃなくて、『やる』の!ー
艶やかなユリエちゃんの姿を思い出した。
すると、
ーやり直せるわけないじゃない!!ー
そう泣き叫んでいた姿が甦ってくる。
それが繰り返し、繰り返し、繰り返し…
くぬぎの木に手をついた。
喉がぐっと絞まった。
首に手をやった。
涙が止まらなくなった。