Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
ある日、いつもと違う感覚で目が覚めた。

たくさんの人が私の周りを行き来していた。



「お母さんね、旦那さんに言って。なんだったら、僕から言ってもいいけど。もう見るのがツライなんて、言ってられないよ」

「分かりました…」



来るたびに、勢いよく私に話しかけてるのに。

今日は元気がない。


「他に会わせたい人がいるなら、その人にも連絡してほしいんだ」

「いまさら…こんな姿を」

「死んでないよ!生きてるんだからね!?どんな姿、こんな姿は、お母さんの価値観でしょ!」



お母さんが怒られるなんて、学校で先生に怒られてた時以来。

あの時のように、カッとなる様子もない。

口を結んで、病室から出て行った。



お母さんの後をついて行った。


談話室で、お母さんが携帯電話を出した。

お父さんの学校に、呼び出しを掛けているみたいだった。


「そうですか…はい。はい。じゃあ、折り返すように伝えてください」



また電話を掛けた。


「ごめんなさいね。急に電話して。今、受験勉強中?」


沙奈かと思ったら、違った。


「大丈夫よ。でもタケルくんから、ちょっと励ましてやってもらえないかしら。だけど忙しいならいいの。ううん。それにね、ちょっと病気が進んでやつれてるから、それも私どうかなって思うんだけど…ごめんね。オバサン言ってること分からないよね?」

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