Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
今までは、戻りたいときに自分の体に戻れたのに、もう中々戻れなくなっていた。

その替わり、行動範囲が広くなった。


家に戻ると、チャイが激しく鳴いた。


「こら。なんなの急に!」

と沙奈が言った。


代わりに散歩行ってくれてるんだ。

沙奈だって受験生なのに。



「ねえ、折り返し電話ちょうだいって言ったでしょ」


お母さんがお父さんに言った。

お父さんは気まずい顔で、書類から目を上げた。


「僕、つらいんだよ。君みたいに強くないんだ」

「私だって辛いわよ…当たり前じゃないの!」


お父さんが、また書類に目を落とした。


「だけど、今年は受験生受け持ってるし・・・分かるでしょ?」

「だってあなたは、父親でしょ!」

「だから辛いんじゃないか!君も辛いなら、母さんを呼べばいい!」

「お義母さん?なんでお義母さんが出てくるの?あなたがまず父親でしょう?」

「拒食症はね、母と娘の問題なんだよ。僕は早く入院させた方がいいって言ったのに、君が『まだ入院するほどじゃない。まだ母親としてやれることがある』って心理カウンセラー頼みで!心理学なんて、あんなの科学でも何でもないんだよ!」

「いまさら、それを言ってどうなるっていうのよ!!」
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