Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
タケルくんが来てくれた。

私を見ても何も驚かなかった。


「ごめんなさい。あの時は、動揺してて…先生が脅かすものだから」

「いえ…」



タケルくんが近づいて来た。


「キヨ」

「もう返事できないのよね」




タケルくんが構わず続けた。


「キヨ。ありがとう」



タケルくんの声を聴くと、ほんわりする。

冷たい病院の壁が、お布団になったみたい。



「ありがとう。約束を守ってくれて」


お母さんがいぶかしげな顔をした。

励ましに来てくれたと、思ってたんだろうな。


「絶対に忘れない。俺もお前みたいに強くなるから。もう誰にも自分の弱さを引き受けてもらったりしない」


タケルくんが私を見つめている。


そして、背を向けてドアを出て行った。



「待って…!」


お母さんが追いかけて行った。


「なんで?なんでなの?清子のために正賢に行ってくれたのよね?本当はタケルくん、王東大付属に受かってたでしょう?」

「違います」


タケルくん…泣いてる…

「キヨが俺のために正賢へ行ったんです」
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