Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
「あの人は、分かってた。

お祖父ちゃんが、どういう人か。

どうなってしまうか、きっと分かっていた…

子供が5人もいて、いつか生活が崩壊するのが分かってた…


どうして、あの人には子供がいなかったのかしら。

お祖母ちゃんには、それが悔やまれて仕方がない。


結婚したこと、子供を授かったこと、これに悔いはないのよ。

だけど…本当に残すべき遺伝子は、あの人の方だったのに…


その気持ちが、校長になった後…どうしようもないほど強くなったの。

何も手につかなくて、なのにじっとしていられなくて、いつも…あの人のことを考えて。

あなたのお父さんとお母さんから、名前を考えて欲しいって言われて…。

どうしても…『清子さん』しか浮かばなかった…」



お祖母ちゃんが苦しげに言った。

「申し訳ないことをしました…ごめんなさい…」


誰に言っているのか分からない。


だけど、心が落ち着いた。


お祖母ちゃんですら、間違う。

この世の誰もカンペキになんか生きられないんだ…。
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