Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
「あと、これね。30日までに提出」

「はい」

「体調大丈夫?」

「なんとか」


職員室を出て、教室へ急いだ。



タイヘンだ、タイヘンだ!

これ全部書かないといけない。



タケルくんとは、会えるようでなかなか会えない。

またテニス部に入ったから、本当に忙しそう。


私は学級委員長だけじゃなく、茶道部の部長補佐になった。



高良先生は…

私が療養している間に、急性心不全で亡くなっていた。


遺言で『娘と一緒の海に撒いてほしい』とあったから、お墓はない。



茶道部の部長が美術部と兼部ってこともあって、

「ムリっ!先生がいないとデキナイ!うわああああん!」

とパニックを起こして、私が補佐することになった。



静かな廊下を早足で歩いた。

遠くから、野球部の掛け声が聴こえてくる。



急に怖くなった。

タケルくんに、このまま会えなくなったらどうしよう。



ずいぶん小さくなった魔物が、薄汚れた顔で私を見た。

その顔には力がない。


だけど、生きてる。
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