Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
「ダマしてはいない」

タケルくんが笑いをこらえている。


「キヨが勝手に思ってたんだよ」

「だって、いとこのお姉ちゃんが系列高に行ってたから…もう…あんなヒステリー起こして、反省してたのに」

「あれでヒステリーなんだ…?うちの姉ちゃんの罵詈雑言、聞かせてやりたいな」

「アカネちゃん、どうしてる?」

「具合悪そう」

「え…!」

「ウィッグで貞子のモノマネしだして…あんまりウケたもんだから調子に乗ってやり過ぎて、むち打ち起こした」

「やだっ」

「母さんが一番笑ってたくせに『余計な仕事増やして!』って怒ってる」

「相変わらず面白いねぇ」


目の前には、海が広がっている。

高良先生のお墓参りもかねて、一度海が見たくなった。

もっと寒くなったら、海なんか見ていられないから。


せんせー!

と心の中で呼びかける。


「うふふ。香田さんて、発展家なお嬢さんだったのねぇ」


あのゆったりした声が、聴こえる気がする。



「この辺でいいんじゃない?」

「うん」


砂浜にシートを引いた。


「あ、飛ぶっ!」

「座って!早く座って!」



タケルくんが座り、私も靴を脱ごうとしたら腰に手が回された。


「きゃあ!」

「よっ…と」


体が傾き、タケルくんの上に尻もちをついた。

後ろから、抱きしめられる格好になる。
< 203 / 216 >

この作品をシェア

pagetop