Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~

卒業

放課後の教室で、卒業文集の下書きに目を通した。

先生に校正の仕方を教わって、代わりにチェックしている。


みんな文章が上手。

桜井くんは、ふざけすぎだから先生に何か言われるかもしれない。



卒業が近いと言っても、ほとんどの人がそのまま内部進学だし、あまり実感がないな。

それでも正賢は、外部の高校に行く人が多い。



例えば、タケルくん。


そして…矢倉くん、ユリエちゃん。



いじめがないのは、復学して改めて分かった。

だって、いじめが起こるほどクラスの人と親しくなれない。



毎週のようにある学力診断テスト。

成績で細かく分けられる選抜授業。

全国レベルの部活動。

みんな、忙しすぎる。




だけど、今は静か…。


空調の低いうなり声しかしない。




もう教室には誰も残っていなかった。


もう誰もいない。



みんな私の中から出て行った。

黒くすすけて干からびた魔物が、そこにあるだけ。

たとえ私の病気が良くなっても、本当はなにも戻ってこない。



ーやり直せるわけないじゃない!!

そんなものになりたいわけじゃないくせに!!

私だってもう…戻れない!戻りたくない…!!ー


ユリエちゃんの言う通りだった。
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