Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
「無理しないで」

の声に手を止めた。

顔を上げると、担任の吉行先生が心配そうな顔でこちらを見ていた。


もうちょっと進めておきたいなぁ…

手元にある本に目を戻した。


ー枕草子にみる 日本人の気づきとその感覚ー


それでもそれを閉じて立ち上がった。

無理してると自分では思わないけど、悪くなったら大変だから。


「よく頑張ってる」

先生は言った。

「放課後もそうやって学びを深めて、大したもんだわ」


頑張ってるんじゃないんだけどな…

面白いから読んでるんだけど。


「さようなら」

「はい、さようなら」


昇降口を出て、第2体育館の脇を通りすぎる。

中から、武道の気合いを入れる声が聞こえる。

あと三時間も練習するんだ。



私は、無理してる?

無理なんかしてない。

これじゃあ、中等部時代と変わらない気がする。

だけど、無理は自分じゃ分かりにくい。


バス停に行くと、中途半端な時間帯のせいか4、5人の生徒しかいなかった。

カラスの鳴き声がした。


三つ四つ 二つ三つなど 飛び急ぐさえあわれなり

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