Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
過食と拒食を繰り返してきたけど、最近ではそんな自分にあまり構わなくなった。


お母さんや沙奈もそう。

「お姉ちゃん、またやってるし」

という感じで、怯えたり騒いだりしなくなった。


お母さんのご飯も美味しいなと感じる。


「無理しないで」

って先生は言う。


お母さんも口には出さないけど思ってる…のかな。

私は不器用だからなぁ…


学校の上を渡り鳥が飛んで行く。



この光景を昔のひとも見てたんだね。

不思議で、ほっとする。

体はここにあるけど、心は平安時代。



飛んでみたい。

でも…落ちちゃったら?



バスに乗って、端末をチェックした。

タケルくんはまだ部活の時間だ。

その上、アルバイトまでやってる。


すごいなぁ。

どうして、こんなに違うの?

私も再開したお母さんの塾をたまに手伝ってはいるけど。


タケルくんは、一人でどんどん大人になっちゃう。

ずっと追い付けないのかな…



あれ?



タケルくんからメールが入ってる。


ー来月末の休み、予定ある?ー


返信した。

ーないよ。沙奈が試合でどこも行けないからー


返ってこないと思ったのに、すぐに着信が入った。

慌てて、バスを降りる。


「は、はい」

「キヨ?今、みどりの窓口にいるんだけどさ」


確かに、雑踏の中らしく声が聞き取りにくい。


「うん、うん?」

「聞こえる?」

「聞こえるよ」

「京都、行かない?」


きょ…京…

「日帰りで。行くなら切符買っちゃおうと思って」


言葉が出なかった。

だからバイトして…


「キヨー、聞こえてマスかー?」

「行きます!!」


バスがエンジンを掛けた。

「乗ります!待って!」

エンジン音に負けないくらいの声が出た。
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