Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
何にも言葉がでないまま、堂々とした建物に向かって進んでいった。

大学生たちは、足早にどこかへ向かって進んで行く。

どこからか、聞いたことのない弦楽器の音が聴こえてきた。

話されている言葉もテレビでしか聞いたことがない。

自分が外国人になった気がした。


「タケルくん…」

そう言葉に出したとき、涙が出そうになった。

なんでここへ来たのか、分かった。


足が止まった。

膝から力が抜けて、崩れ落ちそうになった。


タケルくんも立ち止まった。

「ここに師事したい先生がいる」


脚が震えてきた。

だけど、仕方ない。

仕方ないんだ。


「ここ目指す。滑り止めもこっちで受ける」


うつむきながら、頷いた。

喉の奥から泣き声が漏れそうになった。

全身の血が抜け落ちていく気がする。

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