Bu-KIYOびんぼう ~幼なじみと不器用な約束~
矢倉直弘くんは、テニス部のエース。

硬式テニスがしたくて、この中学を受験したらしい。

入学式で、頭ひとつ分みんなより高いその姿に、目が離せなくなって、気がついたら好きになっていた。


年末の全国大会で優勝して、もはや有名選手。


手足が長くて、顔が小さい。

涼しげな顔立ち。

一見、冷たそう。だけど、笑うと可愛い。

そのギャップに、みんな恋に落ちる。



手の届かないはずの人なんだけど、同じくテニス部のユリエちゃんがいつも協力してくれる。



なのに、肝心のワタシが…私に協力してくれない…。



「アイシングは?」

と声がした。


声の主に言った。

「それほどじゃ…」

「あ、私持ってる!」

ユリエちゃんは立ち上がった。



そこまでは、いいよ!

と声に出す前に、もうユリエちゃんが目の前にいない。



ふう…



「ため息、なし」

私は、タっくんを見た。


「情けない顔だな」

「地顔です・・・」
< 7 / 216 >

この作品をシェア

pagetop