魔王スサノオ降臨

Ⅲ、大蛇(オロチ)の封印


八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の毒で、強大な力を得たスサノオを封じ込める鎖を作るには、同じ八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の体の部分が必要なんです。
そこで、天照大神(アマテラスオオミカミ)は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の爪、両手両足8つ分の160本と牙、1匹2本の8匹分で16本分を人間の一族に送ったのです。
一族は大蛇(オロチ)の爪を砕き、鉄に混ぜて8本の強固な鎖を作る作業に掛かりました。
しかし、鋼鉄のような爪と牙は容易に砕くことができません。
困った一族の長は、天照大神(アマテラスオオミカミ)に願い出て、須佐之命(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を切り刻んだ時に、欠けてしまっている十束剣(トツカノツルギ)を貰い受けました。
その十束剣(トツカノツルギ)を溶かし、3本の金槌を作り、爪を砕くことができたのです。
1匹分の爪から1本の鎖を作り、全部で8本の鎖を作り上げました。
その後、16本の牙から3本の剣を作り、天照大神(アマテラスオオミカミ)に献上しています。
この剣は、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の牙から作られたので、大牙剣(ダーヤノツルギ)と名付けられました。

そして魔界では、閻魔(エンマ)軍の反撃が行われようとしていました。
魔物中心のスサノオ軍との攻防は、鬼族中心の閻魔(エンマ)軍の方が優勢です。
しかし、現大王のスサノオが現れると、正面攻撃は全く効果がありません。
次々と、閻魔(エンマ)軍の兵隊が踏み潰されていきます。
なんとか、スサノオの動きを封じることは、できないのか。

そこに立ち上がったのが、この時点で閻魔(エンマ)軍として参加していた酒呑童子(シュテンドウジ)一派でした。
酒呑童子(シュテンドウジ)の配下は副首領の茨木童子、そして四天王として熊童子、虎熊童子、星熊童子、金熊童子の四人の鬼が在り、更には、いくしま童子という勇猛な鬼も従います。
酒呑童子(シュテンドウジ)の力は、スサノオに引けを取りません。

決戦の時、魔物の群れに守られたスサノオ、正面から閻魔(エンマ)軍が激突します。
しかし、この時、酒呑童子(シュテンドウジ)と配下6匹の鬼の姿は見られません。
閻魔(エンマ)軍に押され、魔物の軍勢が引き始めた時、スサノオが加勢に入ります。
あっという間に形勢逆転で、閻魔(エンマ)軍が退却を始めたその時、物陰に潜んでいた酒呑童子(シュテンドウジ)の四天王が、油断したスサノオの両足を抑えにかかります。
それに続いて、副首領の茨木童子が右手、いくしま童子が左手の動きを止めます。
それを見た、魔族の軍勢が一斉に6匹の鬼に襲いかかります。
この6匹の鬼達は鬼族の中でも最も屈強な者達、魔物の攻撃を受け、全身血だらけになっても手足を離しません。
この瞬間、酒呑童子(シュテンドウジ)が大きく跳ねあがり、特大の斧(オノ)でスサノオの頭部に渾身の一撃を加えます。
ただ、既に八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の皮膚で覆われているスサノオの頭部は、斧の攻撃も表面で跳ね返しました。
しかし、酒呑童子(シュテンドウジ)の強烈な一撃は傷を付けられなくても、スサノオを気絶させるには充分でした。
これを見た、魔物は一斉に退却します。

気絶したスサノオ(シュテンドウジ)を閻魔(エンナ)支配地の牢獄に運び、人間一族が作った鎖で拘束しました。
8本の鎖を手足に各々2本ずつ使い、ついにスサノオの動きを完全に封じたのです。
皮肉にも、力を手に入れ最強の魔王となったスサノオは、同じ八岐大蛇(ヤマタノオロチ)から作られた鎖によって、永遠に動けぬ身となりました。
ただ、この鎖にも弱点があることを、返り咲いた閻魔(エンマ)大王は知る由もなく・・・

スサノオ捕囚の連絡を受けた天照大神(アマテラスオオミカミ)は、ほっとするも、弟のことを憂い、嘆き悲しまれました。
その時、天照大神(アマテラスオオミカミ)が流した涙が集まって、8つの玉となったのです。
これが、後に言う天照(アマテラス)の涙です。
須佐(スサ)神社の建立においては、当初、毒に侵された須佐之男命(スサノオノミコト)の治療のための建物であった。
しかし、治療の甲斐無く、魔界に落ちた須佐之男命(スサノオノミコト)の御霊を鎮める社となりました。
ただ、御神体になるはずの須佐之男命(スサノオノミコト)は魔界の魔物になり下がり、止むなく天照(アマテラス)の涙を祀り、須佐之男命(スサノオノミコト)が帰還するまでの御神体としました。
しかし、そこにいないはずの須佐之男命(スサノオノミコト)を永遠に見守るため、須佐(スサ)神社のすぐ隣に目立たぬ様、天照(アマテラス)社を建立させたのです。

捕らえられたスサノオですが、自由が奪われたにも関わらず、全く慌てませんでした。
未だ配下にある魔族の者達に、閻魔(エンマ)大王に分からぬよう、密かに脱出のための指示していたのです。
今、天界・人間界・魔界に存在する道具や武器では、この鎖を切ることはできません。
でも、ある形で八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を復活させることで、鎖の封印が解けるのです。
1頭1尾が復活するごとに、鎖の強度が普通の鎖になっていきます。
何千年かかろうとも、8本の鎖を切って見せると、スサノオの決意は燃え盛っていたのです。

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